ライセンスフリーラジオの運用方法を紹介します。

開局の準備が出来たらイベントに参加してみましょう。

【ライセンスフリーラジオとは】準備編/運用編

準備編でライセンスフリーラジオで利用する機材の紹介を行いましたが、入手も済んで開局となる方に運用方法を順に紹介します。本内容は静岡県に在住する自分の例を基にしてますので、必ずしも他地域も同じとは限りません。あくまで参考として下さい。

■コールサインの決定
アマチュア無線とは異なりコールサイン呼応の義務はありませんが、業務で無線機を利用している方との区分のため、コールサインを名乗ります。コールサインは自分がオリジナルで作成しますが、現役時代に使っていたコールサインが有れば活用します。コールサインを作成する手順は次の通りです。

 居住地域のカタカナ表記+アルファベット(1~2文字)+数字(2~4桁)

注意点は他の局とダブらない事です。「AE86」「CB750」など車両型式、「TS520」「RJ310」など無線機の名称などは使用率が高いです。なお、アマチュア無線のコールサインの場合、無線機を違法改造して運用しているとの誤解が生じますので、利用はお勧めしません。自分で作ったコールサインは自己管理です。役所に届け出る必要もありません。作ったその瞬間から利用可能です。もし、他に同じコールを使っている方を確認したら即座に変更しましょう。

■運用地の選択
ライセンスフリーラジオ(市民ラジオ、デジタル簡易無線、特定小電力トランシーバー)は基本的に見晴らしの良いフィールドに自ら出向き、無線を通じて初めて出会う相手と交信するという運用です。さらに市民ラジオの場合、春~夏はEスポ(スポラディックE層)を使った交信が可能なため、海岸線や水が張られた水田など平地での運用も有効です。このような理由からライセンスフリーラジオの運用は、ハイキングや登山と組み合わせる方も多いです。
アマチュア無線のように自宅にアンテナを立てて遠距離交信を行なうという運用は、デジタル簡易無線であれば可能ですが、固定した場所からの通信は相手も固定化してマンネリ化する傾向があるため、一般的ではありません。フィールドに出ない事にはライセンスフリーラジオは楽しめません。
無線機の性能よりも運用に使用する場所の方が結果に左右します。運用は基本的には高い場所を選びますので、山頂・ビルの上階・展望台などへ出向きます。ただし、市民ラジオの場合はこの限りでなく、Eスポと呼ばれる電離層が発生するシーズン中は海岸線・港・湖の辺・河原・河口・広い水田のあぜ道など、広く水が張られている場所で運用する方が有効です。以下は屋外運用を行うにあたり全般的な注意事項です。

・私有地に勝手に入らない事。
・公共の場所では他の方の迷惑にならない事。
・無線を禁止している場所では運用しない事。
・危険が有る場所では運用しない事。
・山に登る場合はそれなりの装備で登る事。
・時間に余裕を持ち、日没前に下山する事。
・ゴミは持ち帰る事。

特に公共の場所での運用は、来訪されている他の方への気遣いや配慮を行う事が重要です。「禁止になっていないなら好きなだけやってもOKだ!」なんて考えは厳禁です。無線の事など全くを知らない人からすれば隣で無線交信などされたら迷惑以外何モノでもありません。管理者にクレームが入れば当然禁止になります。これまでも空気を読まないで無線運用を行われた局が原因で、あちこちの公共施設で無線の運用が禁止にされている事実が有ります。
また、無線機の性質上、業務用に無線を利用されている局も多数います。ライセンスフリーラジオの運用ルールが優先と勘違いした局が業務局に対して「チャンネルチェックしないとは無礼だ!」「通信中に後から割り込むな!」とクレームを付けてトラブルにも発展しています。呼び出しチャンネルの占有などでなければ、一歩下がって譲る気持ちも大事です。世の中にライセンスフリーラジオというジャンルの無線趣味の理解を得るためには大切な事です。

■運用情報の収集と拡散
無線の趣味というのは相手が居る事で成り立ちます。インターネットには他局の運用情報の収集や自分の運用予定をアップする場所として掲示板が設けられてます。最も代表的な掲示板は「11mリアルタイム情報(一行掲示板)」です。市民ラジオの運用の話題が主ですが、交信結果の報告や御礼など幅広く利用されています。

11mリアルタイム情報(一行掲示板)
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■市民ラジオによるEスポ(電離層)交信
市民ラジオは他のライセンスフリーラジオに比べスペック的に非弱な印象ですが、ひとたびEスポ(正式名称はスポラディックE層)と呼ばれる電離層が発生すると思いがけない距離の交信が楽しめます。そのため、Eスポ交信が市民ラジオの楽しさの全てと言っても過言ではありません。市民ラジオがライセンスフリーラジオの王道と呼ばれる理由でもあります。
Eスポの発生状況はNiCT(独立行政法人情報通信研究機構)がインターネット上に開設している「スポラディックE層リアルデータ」のサイトで把握ができます。このサイトでは全国4拠点の監視装置で計測した臨界周波数を15分おきに公開しています。この臨界周波数が9MHzを超えると長距離交信が可能なEスポ発生との判断となり、チャンネルが賑やかになります。
Eスポの発生時期は4~10月で、ピークは6~7月です。シーズン中は市民ラジオの運用率がかなり高まります。8チャンネルがメインに利用されますが、混み合ってくると、3チャンネル、4チャンネル、6チャンネルと順に埋まっていきます。

https://wdc.nict.go.jp/Ionosphere/realtime/latest-fxEs.html
Eスポ(Es)シーズンOFF(11~3月)
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Eスポ(Es)シーズンON(4月~10月)
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Wakkanai(稚内)-----北海道方面のコンディション
Kokubunji(国分寺)--本州のコンディション
Yamagawa(山川)-----九州方面のコンディション
Okinawa(沖縄)------沖縄方面のコンディション

その他のコンディション把握方法は次の通りです。詳細はブログ記事を参照して下さい。
・27.005MHzのAM周波数で聞こえる違法局の交信の受信状態から把握する。
・27MHz帯の各地の漁業無線局の定期放送の受信状態から把握する。
・FMラジオの88MHz~90MHzに中国語FM局が入感する事で発生を把握する。

【F層について】
冬節はE層より上部に発生するF層が活発になります。F層は地表との反射の間隔が1500km以上ある事から、東海地区の場合だと沖縄や北海道の運用局との交信が楽しめます。F層についてはブログ記事を参照して下さい。

関連するブログ記事
Eスポ発生の確認手段など
F層伝搬よる遠距離交信に成功しました
Sメーターの無い無線機の運用方法
違法局への対応

■特定小電力トランシーバーによるレピーター交信
実はライセンスフリーラジオの中で最もコストパフォーマンスが高いのは特定小電力トランシーバーだったりします。たった10mWのトランシ-バーなのに可視できる範囲内に対し確実に電波を届ける実力を持ってます。判り易く表現すると山の頂上に立って電波を出した場合、その場所から見渡せている全ての場所に声が送り届けられるのです。この特性を利用して各地に設置されているのが「特小レピーター」です。本来、特小用レピーターは企業内にクローズな環境下で設置される事を想定したものでしたが、ソーラーパネルと蓄電バッテリーをセットの上、山頂や屋外の高い場所に設置してチャンネルとトーン番号を公開していますので、不特定多数の局との交信が楽しめます。殆どの特小レピーターは個人またはグループの私財で設置されボランティア精神で管理されている事から、長時間の占有使用は避け、ゆずりあいの気持ちを持って利用しましょう。

全国に設置されている特小レピーターの所在については下記を参照して下さい。

https://www.freeradio.jp/?p=729
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※レピーターを利用するには中継対応の特定小電力トランシーバーが必要です。

関連するブログ記事
特定小電力トランシーバのレピータ設定について

■デジタル簡易無線によるラジオダクト交信
デジタル簡易無線は351MHzという、アマチュア無線の144MHzと430MHzの中間に位置する事から電波の飛び方は両周波数の特徴を持っています。さらにデジタル特有の特殊な回り込み方が予想も付かないという面白さが有ります。さらに楽しめるのがラジオダクトです。デジタル簡易無線は他のライセンスフリー無線と異なりパワーは5Wも有り、アンテナ認可されたアンテナであれば交換もOKです。現在は最大12エレの八木まで認可されている状況から、ラジオダクトに電波を伝わせて遠距離交信を楽しむ愛好家が増えています。毎年、GWの一斉オンエアディになると全国規模で実験が行われるくらいに盛んになってきています。ラジオダクトの発生や予測は下記のサイトで確認できます。

https://www.dxinfocentre.com/tropo_eas.html
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■全国一斉開催イベントへの参加について
昭和50年代に一大ブームになった市民ラジオですが、その火付け役となったのが「ラジオの製作」というエレクトロニクス系雑誌です。アマチュア無線やBCLと共に市民ラジオの記事が毎月発信され、当時の学生は熱くなりました。ラジオの製作の編集部の主催で数々のイベントが行われ、そのうちのいくつかは定例イベント化となり、「ラジオの製作」が廃刊になった後も継続しています。ここで定例になっているイベントを紹介します。
①春の一斉オンエアディ(春分の日 3月20日または21日 9:00~15:00)
②GW一斉オンエアディ(憲法記念日 5月3日21:00~翌日15:00)
③Summer Vacation(7月最終日曜日の前日 21:00~翌日15:00)※略して「SV」
④秋の一斉オンエアディ(敬老の日の前日 21:00~翌日15:00)
⑤各地一斉オンエアディ(文化の日 11月3日 9:00~15:00)
⑥年末年始一斉オンエアディ(12月31日 21:00~翌日15:00)

関連するブログ記事
参加した一斉オンエアディの記事一覧

「ラジオの製作」が刊行されてた時代はイベント日が祝日の場合、前日の21:00~祝日の15:00が開催時間でした。休日法の変更や自動車業界を中心とした祝日出勤の常態化などから、祝日に連結した土日をイベント日とする方向に変化してきています。とはいえ祝日もイベント日である事実には変わりはありませんから、祝日が休日ではない局に対する遠慮など不要です。堂々と楽しみましょう。

■ブログ記事について
ライセンスフリーラジオを開始するための情報を紹介しましたが、無線の運用に必要な情報は以上の説明だけではありません。
自分が公開しているブログは、日常の運用で役立つ情報を常時アップしていますので古い記事から順にお読よみ頂きます事をお勧めします。

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