ライセンスフリーラジオを始めるための準備を紹介します。

使用する無線機について説明します。

【ライセンスフリーラジオとは】準備編/運用編

最初にライセンスフリーラジオとは、無線従事者の免許証の保有を前提としない無線ジャンルの名称です。
略してフリラと呼ばれます。(フリーライセンスと表してる方もいらっしゃいますが、同じ目的を意味してます)趣味の無線通信を行なう場合、一般的にはアマチュア無線の従事者の免許証を取得するのが通例ですが、ライセンフリースラジオ用の無線機器を利用した通信を行う場合においてはこれを必要としません。

■ライセンスフリーラジオに関する情報について
ライセンスフリーラジオの運用に関する各種の情報は、色々な立場にある局から様々な方法で提供されていますが(自分もその中のひとつに過ぎません)、必ずしもネットで検索してトップページに出てくる動画や雑誌で有名になっている局が発信する運用情報は、全国で共通に通用とは限りません。
特にルールやマナーに関しては、地元エリアの通例や習慣の方が最優先です。最近は、Youtub動画の内容を真に受けてしまった方が地元局との交流を避けるように開局し、有名Youtuberの運用のマネを行って地域的なトラブルを起こす事例が増えています。まずは電波を出す前に地元局にコンタクトを取って運用のアドバイスをもらう事を強く推奨します。

アマチュア無線とライセンスフリーラジオの相違点を下記の通り表にまとめました。
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アマチュア無線もライセンスフリーラジオも無線を比較すると、トータルではアマチュア無線の方がレパートリーや自由度が広いのですが、手軽かつ平等に楽しむと言う点のみで比較するとライセンスフリーラジオに軍配が上がります。
アマチュア無線の老齢局の一部には「ライセンスフリーラジオは頑張ってもアマチュア無線の免許が取れない方がやるもの」と決めつける認識が有るようです。30年以上前はそうだったかもしれませんが、今やライセンスフリーラジオを愛好する局のほとんどはアマチュア無線の従事者免許の保有者です。財力にモノを言わせて高額な無線機とタワーアンテナを揃え沢山のQSLカードを集める事を最高峰とする風潮に嫌気した局が、規制で仕様が規格化されたライセンスフリーラジオ用の無線機器を用いた無線を楽しんでます。
面倒な風潮抜きに、無線を緩~く、永~く楽しみたいという方にライセンスフリーラジオは最適と言って良いでしょう。


関連するブログ記事もご覧下さい。
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■ライセンスフリーラジオの対象となる無線機の種類

(1)市民ラジオ(合法CB無線)
市民ラジオはCBとも呼ばれ、昭和30年代から存在するライセンスフリーラジオでは最古参になります。
昔は無線に詳しくない方でも「トランシーバー」と言えば、このジャンルを示すくらいでした。ラジオのようなメッキのアンテナを本体から伸ばして使用するのが特徴です。最盛期だった80~90年代に中高生だった層が第2のスタートとして、リバイバルで再開される方が大半を占めていますが、ブームの当時から継続されてる方も少なく無く、また新規に始める若い世代の方も増えています。
市民ラジオの醍醐味は、何と言っても夏場を中心に発生するEスポ(スポラディックE層)と呼ばれる電離層に反射させた遠距離交信です。
ほとんどの局はインターネットでイオノグラムをチェックして、臨界周波数の上昇(=Eスポ発生)ともなれば、遠距離交信が一斉に始まります。私自身も浜松市と南鳥島間2000kmの交信を経験した事があります。シーズン以外は高所に移動した局同士によるGW(グランドウエーブ:直接波)交信が盛んに行われます。
なお、市民ラジオ=CBと、大型トラックに載せられて汚い電波を撒き散らすイメージを持つ方もいらっしゃいますが、ここで紹介する市民ラジオとはまったくの別モノです。市民ラジオは、メジャーメーカー(日本の家電メーカー)が製造したもので「合法CB」、トラックに載せられる無線機の方は「違法CB」と明確に区分されています。

<規格>
周波数:26~27MHz帯の8チャンネル
最大送信出力:500mW(0.5W)
アンテナ:本体内蔵のアンテナのみ

市民ラジオの送信出力は500mWが上限であり無線機本体の改造も外部アンテナの利用が禁止です。
間違った利用をしていなければ利用者全員がイコールコンディションという事になります。
結果的に運用場所や時間帯に工夫を凝らしている局ほど遠距離交信に有利なのです。

西無線研究所 NTS111(新技適対応)
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<購入時の注意点>
初めて中古の市民ラジオを購入する場合、次の条件を満たした機種を推奨します。

・完動である事が確認(保証)されているもの。
・本体やアンテナに損傷が無いもの。
・8チャンネル実装されたもの。
・ロッドアンテナであるのもの。
(ヘリカルアンテナ機は2台目はしましょう)
・違法改造されていないもの。

既存機種に関しては、オークションサイトやリサイクル店で入手するのが通常手段となります。
もっとも年式が新しい既存機種でも2005年製ですから故障した場合はメーカーで修理が受けられない事をご承知下さい。
オークションサイトで外部アンテナ接続用にM型コネクターが追加されていたり別の機種のアンテナに交換された個体が有りますが、これらは違法改造機です。絶対に購入しないようにお願いします。
下の写真は違法改造された個体の一例です。

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<検定機/技適機について>
メジャーメーカー製の市民ラジオには「検定機」と「技適機」が存在します。「検定機」は免許制度が存在した頃の機種で「技適機」はその免許制度が撤廃された以後の機種となります。
ごく一部に「検定制度が終了した時点に有効だった免許状を持ってない人の検定機の利用は違法行為である」と個人的な法解釈で検定機の利用そのものを否定する意見を主張される方が存在しますが、検定機は運用上「みなし技適」との認識で今に至っており、これまで検定機を利用した方が使用禁止の命令や指導が行われた事実は一切ありませんのでご安心下さい。

<新技適機について>
新スプリアス基準の改正によりメジャーメーカー製の検定機/技適機の使用期限は、2022年11月30日迄となります。(追記:施行は順延になりました)
これに代わり以後も利用が許されるのが新技適を取得済みの市民ラジオです。既に特定の機種(ソニーICB-680/707/770/87R、ナショナルRJ-410/580)については、有志やその支援業者の手で新技適の取得が行われています。さらに最近は新興メーカーによる新しい市民ラジオの市販も始まっています。
ここで水を差すようなアドバイスになりますが、市民ラジオは利用者個人に志や思い入れの有無を問うような趣味では決してございませんので、精神論で熱くなった有名局の言動や動画に影響される事は避けて自身が納得できる方法で購入される事を強く推奨します。自分は、ハンディ機のNTS111を新規に購入した他、長きに渡って愛用していたICB-770を新技適化する方法を選びました。
市民ラジオの購入の参考になるブログ記事が有りますので参照下さい。

関連するブログ記事
市民ラジオ(合法CB機)の価格の考察
ヤフオク出展者の文面の言い回しの考察
新技適化したICB-770の運用レポート

(2)デジタル簡易無線(DCR/登録局)
デジタル簡易無線は「デジ簡」とも略称され、新世代のライセンスフリーラジオとして注目を浴びています。市民ラジオ、特定小電力トランシーバーと事なり、免許申請(届出)を必要とします。周波数は351MHzで82チャンネル(さらに15チャンネルを空中レジャー用)が割り当てられ送信出力は5Wと市民ラジオの10倍です。(特小トランシーバーの500倍)
技適を取得した外部アンテナのみ使用する事が許可されており最大12エレの八木アンテナまで発売されています。特定小電力トランシーバーでは通信距離が短か過ぎると言う作業現場の意見の反映と後記するパーソナル無線が平成27年で使用禁止になった事から、これらの層の受け皿として制定されました。業務での使用を強く意識しているためか、第三者には判読不可能な秘話機能が付いています。

<規格>
周波数:351MHz帯(82チャンネル/空中レジャー専用は15ch)
最大送信出力:5W
アンテナ:技適対応品に限り交換可能(現在12エレ八木まで認可済み)

<購入時の注意点>
使用にあたり免許申請を行わなければなりません。デジタル簡易無線には3B,3R,3Sの3規格があり、登録局として陸上Fで不特定多数を相手にした通信には使えるのは3Rですので、必ず3Rを購入します。間違えて購入すると免許申請すらできません。
また、2023年以前の規格機は30chになります。新たに購入をする方は82chの機種を選びましょう。なお、3Rであってもアルインコの一部の機種で採用しているRALCWI方式は、一般に普及しているAMBE方式とは異なるりますので交信できませんので、御注意下さい。(RALCWI方式の採用機種名:DJ-DP50H/HB、DJ-DP10A/B)

アイコム IC-DPR6
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デジタル簡易無線の運用の最大の魅力は何と言っても、ライセンスフリー仲間という連帯感です。
アマチュア無線とは対極的に、相手を選ばず未交信の局と交信しようというアクティブな環境にとても好感を感じます。
最近はデジタル簡易無線を中心に出筆された専門書籍が販売された事も有って、デジタル簡易無線からライセンスフリー無線にデビューする局も増えています。認可品であれば外部アンテナの利用もOKです。2013年6月にはダクト(濃い雲の下を伝搬させる通信)により1000kmを超える長距離交信も成功しています。私も2013年12月17日に開局しました。

関連するブログ記事
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(3)特定小電力トランシーバー
特定小電力トランシーバー用の無線機は特小トランシーバーと呼ばれ、これまでの市民ラジオの代用として、あらゆる業務の現場で利用されています。送信出力は10mWと市民ラジオの1/50ですが、UHF帯の周波数であるがため、見通し範囲内には必ず届くという特徴があります。
また、中継器を経由した交信が可能である事も特徴です。個人ボランティアが設置した中継機がレピーター(中継局)として全国で稼働しています。詳細は運用編で紹介してます。

<規格>
周波数:422MHz帯の47チャンネル(単信通信向けは20チャンネル)※詳しくはこちら
最大送信出力:10mW(0.01W)
アンテナ:本体内蔵のアンテナのみ

<購入時の注意点>
お勧めの機種は、アルインコのDJ-R200D(26,000円前後)です。中継対応および自らレピーターになる機能を備え、飛距離・感度ともに優秀です。レピータになる機能が不要であればDJ-P24L(16,000円前後:単三電池2本モデル)または、DJ-P221L(10,000円前後:単三電池1本モデル)になります。全て品名の末尾にLが付加するロングアンテナモデルを指名です。
アルインコ以外の機種はスケルチ開放状態で中継機能を連続使用する事が考慮されてないため、ライセンスフリー運用には不向きです。中継機能を使わない単信通信をメインに楽しむのであればメジャーメーカー製の20チャンネル機の新品(9,000円前後)または中古(4,000円前後)をお選び下さい。
特定小電力トランシーバーも市民ラジオと同様に「技適機」と「新技適機」の2種類が有り「技適機」の使用期限は、2022年11月30日迄となります。(追記:施行は順延になりました)

左:アルインコ DJ-P221L 右:アルインコ DJ-P24L
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なお、オークションなどで通話距離29kmとか56kmなどと書かれた外国製の安価な無線機が売られていますが、日本国内で使用すると電波法違反となり摘発の対象になります。(参照:総務省からの勧告これらの外国製無線機を国内で使用すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。小さい無線機だから罪も小さいという事はありません。無線機の大きさと、問われる罪の大きさは正比例しません。

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(4)デジタルコミュニティ無線
ライセンスフリーラジオの中では一番新しいジャンルの無線機です。
周波数は142MHz~146MHzで144MHz帯のアマチュア無線バンドの前後に18チャンネルが割り当てられておりデジタル波で0.5Wのパワーが出せます。特徴はGPSを搭載して交信相手の位置情報と距離が判るようになっている点です。外部アンテナの利用は可能ですが、最大利得が2.14dB以下の技適取得品と制約されており、今のところホイップアンテナ系のみ選択可能です。
デジタルコミュニティ無線は、デジタル簡易無線ほどパワーを必要とせず、かつGPSの利用が見込めそうな学校や町内会、介護施設での利用を想定して規格が制定されました。(参考:総務省の実証実験の報告書
コーデック(デジタルの符号化方式)を独自開発するなど規格の制定に中心的だったアイコムは、IC-DRC1を発表して普及に努めましたが発売当初の売出し価格が30,000円近かった事(特小が3~4台買えてしまう上、デジタル簡易無線の普及で1W機が20,000円台で購入可能)などから当初に期待したような需要が生まれず、結果的に新たなジャンルのライセンスフリーラジオとしてフリラ愛好家に歓迎される形となりました。
そのような経緯からアイコムは、販売方法を見直し競合メーカーのアルインコに対しOEM供給を行う事となり今に至っています。(総務省もアイコムも不特定多数との交信を目的とする趣味の無線機としての需要など元々見込んでいなかったと推測します)

<規格>
周波数:142/146MHz帯(18チャンネル)
送信出力:0.5Wのみ
アンテナ:技適対応品に限り交換可能(利得は2.14dBが上限)
特徴:相互に位置情報と通信距離が確認可能。PCの地図上に位置表示も可能。

<購入時の注意点>
通話用に使える周波数が極めて少ないところを無理やり割り当てられた経緯から、1~5チャンネルは狩猟犬の位置情報を発信するマーカーが使うチャンネルと完全に重複しています。山間部での利用には注意が必要です。
無線機の製造元はアイコムですので、基本スペックや価格には大きな相違はありませんが、アイコムのIC-DRC1/IC-DRC1 MKIIは業務向け、Sメーターが搭載されたアルインコのDJ-PV1Dはフリラ&レジャー向けとして販売側で采配されているようです。

アイコム IC-DRC1
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※パーソナル無線
パーソナル無線は1982年に違法CBユーザーの受け皿として、導入されました。利用するにはデジタル簡易無線と同様に免許申請(届出)が必要でした。一時は170万局の登録が有ったようですが、携帯電話の普及と共に利用者は年々減少して無線機を製造するメーカーも無くなりました。現時点では有効期限が切れていない免許状をお持ちの方のみ記載された期日まで利用が可能。

<規格>
周波数:903MHz帯の158チャンネル
送信出力:5W
アンテナ:認可品に限り交換可能

<注意>
既に生産が中止されて15年以上経過しています。ROM発給も行っていないので新規の利用もできません。
地方のカー用品店や電気店の店頭にはまだ新品が並んでいる事が有りますので間違っても買わないよう注意して下さい。
利用できるのは有効期限が切れていない免許状を持っている方のみです。

山積みの中古パーソナル無線機。購入しても免許申請はできません。
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免許申請できないからと、中古の無線機をそのまま使用した場合、1年以下の懲役又は、100万円以下の罰金に処せられます。

■ライセンスフリーラジオ用無線機のまとめ
各無線機の特徴を表にまとめました。

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・平地間飛距離は外部アンテナを使用しないで行なった場合の距離です。
・最大飛距離は好条件下(高所、外部アンテナ、電離層反射、ダクト反射)の場合です。

次は運用方法を説明します。

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